明け方は雨が降っていた。これでは釣りにも行けないし、テントから出るにも面倒なので、遅くに起きたあとはテントの中で過ごした。
昨日、坊主ライダーから借りた文庫本があるのだ。ボクは本を読むのはかなり好きなほうだが、今までキャンプ地で読んだことはなかった。外は小雨が降る中、テントの中でごろごろしながら本を読んだ。
昼近くなるとすっかり雨は上がって、晴れてきた。それでも読みつづけた。久々の読書が楽しかったのだ。
昼頃、ふと人の気配を感じたと思ったら、坊主ライダーと女性ライダーがボクのテント前まで来ていた。女性ライダーが出発するというのだ。雨だから滞在しようかと思っていたら止んだので急いで片付けたそうな。ボクは寝起き状態で本を読んでいて情けない姿だったが、別れのあいさつをした。
その時、2人にボクのテントを見せた。テントの中に大きなエアベッドが入っている。床面の8割をベッドが占めている様子を見て、「これ反則ですよ!」と言われた。荷物が少ないバイク乗りにとってエアベッドなんてまったく別世界の道具だった。
ドルンドゥルルンとカッコいい音を響かせながら、さっそうと女性ライダーはキャンプ地から出ていった。ボクも坊主ライダーも手を振ったが、さぞ呆けた顔をしていたと思う。
彼女が出て行って、またボクと坊主ライダーだけになった。静かな草地は陽を浴びて、ゆっくりとした時間が流れていた。
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