8月20日(水)

 


 前日早起きして、あちこち移動して疲れたせいか、遅い時間に目が覚めた。

 食事したりしてテント前でだらだら過ごしていると、キャンプ地にアメリカンタイプのバイクがやってきた。ヘルメットを脱いだ姿を見たら若い女性だった。おっ!と思いつつ、草地の反対側でだらだら過ごしていた坊主ライダーの方を向くと、むこうも同様に女性ライダーを見ていたらしく、その直後にボクと目があった。同じような行動パターンだったらしい。

 坊主ライダーがにやにやしながらやってきて「あの人、泊まっていくんですかねぇ?」。しばらく女性ライダーの様子を二人して見ていると、広い草地の中でテントを張る場所を選んでいる様子。炊事場から離れた場所にある東屋のそばに荷物を置きはじめ、テントの設営をはじめた。20歳代前半くらい。旅慣れた感じで、てきぱきとテントを張っていった。

 坊主ライダーと二人でさりげなく近づき、さりげなく話しかけた。「こんにちは。ここでテント泊ですか?」「風呂は近くにありますよ」「スーパーですか?それならこの坊主頭の人が詳しいですよ」「長期滞在ですか?」「今日来て正解ですよ。先日まではものすごい人とテントの数で・・・」と、たたみかけるように話しをして、無理やり仲良しになった。といっても、その女性ライダーは受け答えがしっかりしていて、愛想が良く、30歳代(らしい)男二人を相手にしてもスムーズにやりとりができていた。

 女性ライダーの設営の邪魔になりそうなのでボクら二人はその場を離れると、昨夜飲みながら話しをしたことを思い出した。このキャンプ地にゴミを放置して帰ったキャンパーが多く、そのゴミ拾いをしようというのだ。二人とも長くお世話になっているキャンプ地に、このくらいやって当然だろうと思っていた。

 ボクが大きなゴミ袋を用意して、二人で空き缶や炭の燃えカスをはじめ、あらゆるゴミを拾った。ちゃんと分別して。大きくなったゴミ袋2個をバイクで運ぶのは無理なので、ボクが車に積んで途中のスーパーで捨てることにした。

 断っておくが、女性ライダーにいいとこ見せようとしたわけではない(笑)

 さらに、昨夜、坊主ライダーがこのキャンプ地で読んでいる本の話になって、その文庫本数冊を借りた。

 この時間から釣りに行く気にもなれず、近くの男鹿半島までドライブしようと思いついた。男鹿半島は、一応このあたりの観光スポットになっている。八郎潟を出て、海沿いの道を走ると男鹿半島。空はどんより曇って、あまり快適なドライブとはいえない天気だった。

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鵜の崎海岸。日本の渚百選に選ばれているらしい。

潮が引いてるのか遠浅なのか、浅い水辺で遊んでいる人がいた。

駐車場のあたりでも、水着を着てバーベキューをしていたり。
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断崖と磯場の間の道をひた走る。

これで天気が良ければ気分いいのだが。
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ほかの車は少なく、滑るように走れるワインディングロード。

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こんな辺境の地のような風景はけっこう好き。

曇った空が孤独感をつのらせ、ロマンチックな気持ちにさせる。

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男鹿半島の先端にある入道崎。

観光地なので土産物店が建ち並び、観光バスの団体旅行者が多かった。

こういう光景は好きじゃないので、そうそうに立ち去ることにした。
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いい感じの灯台のある風景。

だが、団体旅行者が多くてイマイチ。

男鹿半島の内陸部へ向かった。
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真山(しんざん)神社。

歴史と伝統のある神社らしい。趣きと風情がある。
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団体旅行者とガイドが一組いたが、コースをずらして一人でのんびり見てまわった。
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なまはげ館。

男鹿半島といえば「なまはげ」が有名。有料なので館内には入らず…
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入口のなまはげの写真だけ撮って引き返した。

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男鹿真山伝承館。

ちょっと興味があったけど、団体さんたちがなかなか動かなかったのでヤメ。


 入道崎と真山をひとまわりして男鹿観光は終わりにした。夕方が近づいていたので、八郎潟に戻ってバス釣りすることに。

 男鹿半島の中心を通る「なまはげロード」を走り、さらに八郎潟を南下した。

 今日の釣行は、釣果が期待できる八郎潟残存湖南側の塩口船溜まり。

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レンタルボート店のボートが多く残っていた。

盆休みが終わって、八郎潟でバス釣りする人が減ったらしい。
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目の前に落とすだけであっけなく釣れた。30cm台前半。

あいかわらずこのポイントは魚影が濃いらしい。
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いわゆる、イモグラブ。ノーシンカー。

KEITECH・4inchグラブのテールがちぎれたものを逆向きに刺して使った。
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続けて2尾目。

30cmくらい。
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3尾目。

30cm弱。サイズダウンしてしまった。
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ゲリヤマ・カットテール、ノーシンカー。

こういうウィードエリアではストレートタイプのワームが効くようだ。

【本日の釣果】
塩口船溜まりの河口…3尾


 暗くなる前に早めに納竿した。夜には坊主ライダーと飲むし、もしかしたら女性ライダーも一緒に同席するかもしれない。

 途中でビールとツマミを買ってキャンプ地に戻ると、東屋に人影があった。坊主ライダーと女性ライダーだった。もちろんこのキャンプ地に他の人はいない。東屋は屋根があって、大きなテーブルと長い椅子が2組あり、雨が降っても快適に過ごすことができる。ポツリポツリと雨が降り出していたので、この場所にして正解だった。

 坊主ライダーは愛用の真っ黒になったナベでなにか作っていた。3人でカンパイ。静かなキャンプ地の東屋で、静かな雨が降る夜に、小さな灯かりを頼りに小さな宴会をした。灯かりはロウソク。それも安物の細くて短いもの。坊主ライダーが好んで使っている。調理でどうしても見えない時だけ懐中電灯を使った。

 坊主ライダーは煮込みうどんを作っていたのだった。彼いわく、スーパーで激安のうどん玉を見つけたから。安い食材に出会うことを楽しみにして、八郎潟周辺のスーパー巡りをするのが彼の日課だった。煮込みうどんは美味しく3人で食べた。夜風が寒く、暖かいうどんがひとしお良かった。

 島根県松江からやって来た坊主ライダーはぽつりぽつりと話す。しかしその内容はゴーイングマイウェイを貫き通す強い意思を感じた。少しプライベートな会話になり、あえてつっこんで聞いてみると、坊主ライダーは松江でスーパーの店員をやっていた。それも鮮魚コーナー。だから包丁の使い方がうまく、料理のことも普通の男性より詳しかった。数ヶ月アルバイトとしてスーパーで働き、また数ヶ月は旅に出る生活を何年も続けているという。

 女性ライダーは東京都足立から来ていた。若いわりに落ち着いて会話ができるのは、臨時教員をやっているせいなのだと思った。産休などで欠員がでると教員として働いているが、今はたまたま教員の口がないのでのんびりバイクで一人旅をしている。今回は北海道までは行かずに青森まで。

 彼女はこの日は通過地点で八郎潟に寄っただけであり、明日からは南下を続けるという。ボクも坊主ライダーも「少し残念だ」と言った。しかし、あえて言わなくても、人の行動を束縛するつもりはまったくないのはボクも彼も同じのはずだ。

 宴会の終わり際に「明日天気が悪くて出発しなかったら、また夜飲みましょう」と言って、それぞれのテントに帰っていった。

 夜半になると、雨は強さを増していた。


【翌日へ】

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